働き方改革で求められる「客観的な労働時間の把握」とは?

2019年4月1日に施行される働き方改革関連の法改正、「労働時間の客観的把握」について、その内容を深堀りしました。あわせて、あるべき労働時間の集計方法についても、考察しています。

管理監督者も労働時間を把握を

そもそも、今までも企業に義務付けられた「客観的な労働時間の把握」。今回の法律改正で変わったことを整理します。

一定の成果で賃金が支払われる裁量労働制や、経営者と同等の地位である管理監督者は、労働時間の客観的な把握の義務まではありませんでした。なぜなら、これらの人は、自分で労働時間を左右する権限があるとされ、かつ時間外労働などの割増賃金は対象外であったためです。

(なお、管理監督者であっても、深夜労働の賃金は支払わなければならないため、労働時間は実務的には把握する必要がありました。)

しかし健康管理の観点から、上記のような自由度の高い労働者も、労働時間の把握を義務付けた、というのがこの改正点です。

専門的あるいは役付でない一般社員については、この改正点は特に関係ない、と言えます。

労働時間と健康とのビミョーな関係

健康管理の観点とは、以下の労働安全衛生法の規定が関係します。

 時間外が単月100時間超 または 2~6ヵ月の平均で80時間超 の場合

  ⇒ 労働者からの申告により、医師による面接指導を受けさせる義務が、会社にあり

この「単月100時間、複数月平均80時間の時間外労働」は、いわゆる「過労死ライン」と呼ばれる程度の時間外労働だということです。

例として、「月20日出勤、9:00~18:00が定時、休憩60分」の場合で考えてみます。

  時間外100時間 = 1日平均5時間残業

     ⇒ 23:00まで、1か月の間、毎日残業

  時間外80時間 = 1日平均4時間残業

     ⇒ 22:00まで、2~6か月間、毎日残業

想像してみてください。

時間外100時間というと、毎日終電ぎりぎりくらいに帰っているという方が該当しますね。行き帰りの電車で座れないと、かなりきつそうです。

このような方は現状でも、会社に申し出ることで、「医師による面接指導」を受けることができます。

話を元に戻すと、裁量労働制で働く方や管理監督者といった方も、上記の対応ができるようになり、法的保護を受けられる、ということになります。

労働時間は1分単位…なぜ15分単位をやめられないか

今回の法改正については、以上です。

しかし、2度目の電通自殺事件、さらにサンクス事件などの裁判なども考えますと、労働時間はもっとシビアに考えていくことが、会社経営上、必要となると考えられます。そして、その上で、真の働き方改革をしてみてはどうでしょうか。

サンクス事件では、労働時間は1分単位で計算することが企業に求められました。労働時間を1分単位で計算することは、わざわざ裁判にするまでもなく、労働基準行政ではセオリーとなっています。しかしながら、15分未満を切り捨てる取扱いにしている会社が実に多いのです。

会社側の言い訳としては、

  • 「労働時間を細かく把握するなら、仕事から少し離れる時も休憩時間として計算しなければ、フェアでないので、15分未満を切り捨てている」
  • 「労働時間の切りが悪く、十進法では計算しづらい」
  • 「残業はともかく、始業時刻前の始業は認めていないので、契約通りにすべきだ」
  • 「15分未満の切り捨てなど、経営的には大きなダメージでないので、指導や裁判があってから対応すれば十分」

などの声が聴こえてきます。

ありのままの労働時間を集計したほうがいい理由

しかし、ここで改めて現状を考えましょう。

今は「人手不足」です。「ブラック企業」などと言われてしまうと、人が集まらず、さらに今いる従業員も辞めるリスクがあるのです。

さらに言えば、労働時間切捨てのほうが、システム的には難しいはずです。場合によっては、人の目による判断や手修正が必要となります。この方法は、事務でムダな作業が発生していると言えます。

労基署に駆け込まれてからの対応では、社長の時間がとられてしまい、かえって損害が発生しそうなものです。

将来生き残る企業になるためには、今までの方法に固執するほうが、会社にとってリスクなのです

生き残る企業の労働時間計算のしかた

以上を踏まえると、以下の通りにするのが望ましいと言えます。

・システムを導入し、客観的な出社時刻を取り、デジタルデータにできるようにする

 Webサービスで、安いものでいくらでもあります。

・休憩の開始終了時刻は打刻する。これが面倒であれば、労働契約に基づいた休憩時間を控除する。

・始業時間を契約時間にするのであれば、例えば「始業時刻の10分前以前は打刻することも、業務を行うことも禁止する」等のルール運用とする。

・以上から、労働時間から休憩時間を控除した1分単位の時間を、そのまま給与計算に利用する。

・途中でチェック以外は人の手を使わないようにし、ヒューマンエラーを防ぎ、事務の効率化を図る。

労働時間管理は「はたらく人を守るため」

正しい労働時間は、記録にしっかりと残しておくことが重要です。一番いいのは、従業員に渡す給与明細に記載することです。意外に有給残日数と総労働時間が記載されていない給与明細を発行している会社が多いかもしれません(有給残日数の管理は、別の機会に述べましょう)。

一般の正社員は、日給月給制で計算されることが多いものです。この場合、所定内時間は給与計算上必ずしも必要でないため、所定内労働時間や総労働時間を給与明細に計上していないケースが多いのかもしれません。ひと手間かけて、総労働時間を記載するようにすると、さらに労働時間管理がしやすくなると考えられます。

電通事件では、時間外100時間を超えた場合の自殺が業務上災害とされ、民事的な責任を会社が負うこととなりました。

労働時間を毎月チェックし、多い人にはアラームを出して抑制し、二度と同様な悲劇が繰り返されることのないようにしていきたいものです。

働く方の命を守り、健康的に活躍し、成果をきっちり残してもらうことは、経営者や労務担当者の責務です。これらは、少しの工夫でできることなのです。

働き方改革は、ただの法律の厳格化で終わらせてはもったいないと思いませんか。

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