同一労働同一賃金のすすめかた

大企業では2020年4月より、中小企業では2021年4月より本格施行される「同一労働同一賃金」。この基本的な考え方や、企業で取り組む際の進め方について、このページではまとめました。

同一労働同一賃金のキモは、均「等」待遇、均「衡」待遇

同一労働同一賃金の基本的な考え方を整理します。

不合理な待遇差をしてはならない、ということなのですが、ここでよく言われるのが、「均等・均衡処遇」をしてください、というものです。

均等処遇とは

全てで100の仕事とした場合、

前提が同じで、100の仕事をしている従業員に対しては、100の賃金を支払う

均衡処遇とは

全てで100の仕事とした場合、

前提が違い、80の仕事をしている従業員に対しては、80の賃金を支払う

前提条件が同じであれば、同額の賃金を払うことが均等待遇前提条件が違うならその分の差はあっていいが、見合った割合の賃金を支払うことを均衡処遇と呼びます。

なお、上記は時間単価ベースで考えるものです。

例えば、雇用契約上の労働時間が異なる場合もあります。正社員が160時間働き、あるパートタイマーが80時間働くのであれば、当然正社員の半額が支給額の基準となります。さらに役割や仕事内容等により、「正社員が100とすれば、このパートさんがどの程度の役割か」に応じて、時間単価を求めるべき、ということになります。

勤務する時間が違っても、同じ時間給の賃金テーブル上に、正社員も非正規社員ものせて評価するイメージです。

賃金は全てのものが対象なのか

賃金と一口に言っても、様々な種類があります。その種類別に考えてみます。

基本給

基本給が一番やっかいなのかもしれません。企業により考え方や決め方が多様であるためです。

まず、日本型企業では、毎年昇給がある「職能給」が使われてることが多いのに対し、欧米では一般に同じ職務であれば同額の「職務給」を採用されています。働き方改革関連法として施行される同一労働同一賃金においては、この欧米型の「職務給」を採用しないければならない、というわけではないと解されています。つまり、職能給をそのまま採用しても問題ありません。

職能給は、会社での研修等で職能が上がることが前提です。人材活用の仕組みとして、社内外の研修の程度に見合った職能給の上昇が見込まれるなら、同様な部分を非正規にも検討します。

正社員の基本給の一部に勤続給があるなら、定期昇給があるということですので、この部分に見合った勤続給相当部分を、パート単価に組み込む必要があります。

基本給は入社時学歴や、中途入社では前職の給与額など、多様な考慮すべき要素が含まれるため、妥当性を検討するのは難しいところです。

手当

手当は、その手当ごとに検討します。同じ条件が揃えば正社員と非正規社員で異なる取り扱いが認められません

分かりやすいのは通勤手当です。例えば、非正規社員には通勤手当を支給していないような例は、「非正規社員だから支給しない」という説明では違法となります。

住宅手当などは、「転勤命令に従わなければならない正社員にのみ支給している」という説明は、現在合理的とされています。

家族手当は、例えば健康保険で被扶養者にしている、税務上扶養親族にしている等の条件の親族がいれば、同じ条件を揃える必要があります。「非正規だから支給しない」というのは通りません。

皆勤手当は、勤務日数などが同じ条件であれば、同様に取り扱うべきですが、例えば正社員は欠勤すると人事考課が下がるが、契約社員は欠勤があっても人事考課の評定が下がらないような場合、ハイリスクハイリターンとなる正社員だけに皆勤手当を支給する取扱いは、合理的とされます。

役職手当は、同じ役職であれば同額を支給すべきです。もちろん、労働時間の短いパートがリーダー職を受ける場合、リーダー手当は勤務する労働時間に合わせるのは認められる範囲です。

賞与

一般に賞与は業績に応じて支給されるものです。正社員は業績に対する責任が強いのに対して、概して非正規社員はその責任は軽いといえます。とは言え、その責任はゼロではありません。

現状は正社員はしっかりとした額を支払い、非正規には寸志程度で済ませている会社が多いのではないでしょうか。むしろ、お客様の最前線で働いているサービス業などは、非正規社員の力で現場が成り立っている状況ですので、そのあたりを考慮する必要があります。

福利厚生

業務に必要な研修などは正社員も非正規社員も受けさせるべきであり、その範囲は責任やキャリアプランにより若干変わっているものと思われます。

休憩室やロッカーの利用等、ない袖を振れとまでは言われないまでも、できる範囲で対応していくことが求められます。

退職金

実は退職金は、国の方針でも明示されていないところです。現状、多くの会社が導入している、「正社員は退職金を支給し、非正規には支給しない」取扱いで、一定の合理性があると言えます。

企業はどれから手をつけるべきか

次に、上記の賃金種類で、どこから検討していけばいいのか、導入しやすいのはどこからかを検討します。

1、手当

2、福利厚生

3、賞与

4、基本給

という優先順位だと進めやすいかもしれません。

扶養枠内で働きたい方は

同一労働同一賃金に会社がしっかり取り組むと、時間給が上がることが見込まれます。そうすると、扶養枠内(社会保険は年収130万円以下)で働くためには、さらに労働時間を減らさなくてはなりません。さらに、会社は同一労働同一賃金に合わせる義務がありますが、扶養枠内におさえる法的義務はありません。

個人でしっかり管理するか、それが難しいようであれば、扶養枠を考慮せず、できるだけ働くように、ご自分の働き方を見直す必要があります。

高年齢雇用継続給付を受給している方は

日本では、賃金カーブという考え方があり、60歳の定年を迎えた後、賃金が下がる慣行があります。これは、健康や体力面等、また組織としての新陳代謝(若手を入れて組織を維持する必要性がある)を考慮して設計されている、という説明がされます。

もちろん、60歳を迎えてもまだまだ働ける仕事もありますので一概には60歳超で賃金が下がることの合理性がどうか、判断が難しいケースがあります。

平成30年6月1日最高裁判決が出た長澤運輸事件のケースでは、基本給ベースで1割減、年収ベースで2割減程度であれば、妥当性があるとして、合理的と認められています。すべての会社で同様に判断されるわけではありませんが、一定の目安となるでしょう。

欧米等では、賃金の年齢差別が禁止されていますが、職種別の労働組合等、日本と異なる事情があります。

同一労働同一賃金をすすめると、扶養枠と高年齢給付がかえって働き方を阻害する要因となることとなりそうです。

計画的に取組みを

以上の通りです。他の記事で書きました通り、今現在も不合理な待遇差は禁止とされています。同一労働同一賃金をすすめることは、単に法律に合わせるだけでなく、会社として「非正規社員に求めること」を明確にする、人事制度改革となります。

離職率を低下させ、また採用活動も進めやすくなると考えられますので、積極的な取り組みが求められます。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする