格差社会を子どもたちに残すのか~同一労働同一賃金の本気度~

新たに施行される同一労働同一賃金は、強行法規ではありますが罰則はなく、訴訟となった場合に会社に損害が発生するものです。現在のところ、特に中小企業がどのくらい本腰を入れるかは未知数です。しかし、これは将来大人になる子どもたちに、「どのような日本の経済社会を示すのか」が問われているものです。

同一労働同一賃金は「強行法規」

大企業では2020年4月より、中小企業でも2021年4月より施行される「同一労働同一賃金」。主に待遇が著しく低い非正規社員(パートタイマー、契約社員等の有期契約労働者、派遣社員)の待遇改善が必要となります。

よくある働き方についての言及で、「扶養枠内で働くことを望んでいるから」、「定年後、高年齢の給付を受けたいから」などの理由で、待遇を意図的に下げることがあるように感じています。

しかし、この同一労働同一賃金は、罰則はありませんが強行法規です。法律の立て付け上、会社と社員の間で合意したとしても、同一労働同一賃金に反する契約は許されないのです。この意味で、会社は従業員の働き方に配慮する必要はありません。扶養枠でやりたいとか、高年齢雇用継続給付を受けたいなどというのは、その従業員個人の責任、というわけです。

時間あたり800円以上の格差が

現状、正社員と非正規で、どの程度賃金格差があるのかを調べてみました。

以下、厚生労働省が行う「毎月勤労統計調査」の、平成30年6月確報の、全業種平均値を元に算出しています。

正社員:総支給(決まって支給する月給)337,760円、労働時間174.1時間

⇒1時間あたり 1,940円

パート:総支給(決まって支給する月給)99,666円、労働時間87.8時間

⇒1時間あたり 1,135円

正社員とパートの間の1時間あたり給与差額 805円

上記はあくまで月例給与部分だけです。賞与(特別給与)になると、さらに変わってきます。

正社員:賞与(特別給与)月間 259,838円

パート:賞与(特別給与)月間  5,210円

正社員とパートの間の賞与差  254,628円

「非正規なしでは回らない」職場が多いのに、平均値でこの待遇差があります。

「働ける時間」が評価基準になってしまっているのが実情

いくら「キャリア採用でないから」とか、「転勤させないから」、あるいは「フルタイムではないから、貢献度が低い」などと言っても、パートタイマーや有期雇用は企業も使いやすいから広まっている側面があることを踏まえると、以上の現状は、フェアに賃金を支払っているとは思えません。キャリア採用となった全員が会社にしっかりと貢献できているかは疑問ですし、正社員が転勤命令を受け入れない場合も多々あるのが実情でしょう。

率直に申し上げ、現在は

「『長時間働く人=評価が高い=時間当たり賃金が高い』という価値観の世の中」

となっており、その逆も真であり、

「『短時間で働く人=評価が低い=時間当たり賃金が低い』という価値観が許される世の中」

なのです。結局は、

「現在はフェアな評価がされていない世の中」

なのだと言えます。

このままの格差をよしとするか

将来、今の子ども達が社会人になると、今以上に正規雇用の働き方に縛られず、柔軟な働き方が広まることが予想されます。今以上に多様な価値観となり、今でいうパートタイマーや有期労働者などといった働き方を選びやすくなると思います。

それでは、非正規では食えない世の中を継続すべきでしょうか。多くの人が、現在の評価基準が誤っていると感じるのではないでしょうか

それを解決するのが、新法である有期・パート労働法に明記される「同一労働同一賃金」です。

これからの分配は非正規へ

安倍首相は「成長と分配の好循環」を打ち出しています。会社が儲かったら適切に従業員に分配し、従業員はしっかりと消費を行い、経済的にいい循環をつくりましょう、ということです。

このために、最低賃金の毎年3%アップ、春闘への政府の介入とともに、同一労働同一賃金が明記されています。会社のもうけは、正社員よりも非正規社員へ優先的に充てていくことが重要です。

実は現在も「同一労働同一賃金」

働き方改革で叫ばれる同一労働同一賃金でありますが、現在も労働契約法第20条で、不合理な労働条件が禁止されています

その象徴的な裁判が、平成30年6月1日にありました、「ハマキョウレックス事件」と「長澤運輸事件」です。この裁判では、各手当の具体的な支給事由が同一なら、同額の手当を支給するという考え方が示されました。

この判決は、「同一労働同一賃金ガイドライン案」に則しており、これは2020年以降施行される有期パート労働法とセットで定められたものです。

普通は「罪刑法定主義類似の法則」というものがあり、法律で定められていないことで判断されることはないのですが、この裁判では、現在の手当の支給内容は、将来施行される法律基準に明記される基準があてはめられるのが妥当だ、ということとなっており、その面で注目を集めています。

今すぐ取り組む同一労働同一賃金

また別の機会に同一労働同一賃金の進め方を書こうと思いますが、以上の理由により、多くの企業は、従業員が裁判を起こしても負けないように、今すぐ非正規の待遇改善を行うことが求められています

中長期的には、今の社会の不合理を、将来の子どもたちに残さないように、着実に同一労働同一賃金を進めていく必要があります。将来を考える企業であれば、本気で対応することが求められます。

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